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多くの人が集まる駅は人口密度が高くなります。人口密度が高くなると、犯罪やトラブルが起きやすくなるのが通常で、置引きやスリ、痴漢などの犯罪のほか、利用客同士がぶつかったりといったことでトラブルになることも少なくありません。

そこで各鉄道会社で進めているのが駅への防犯カメラの設置です。駅に防犯カメラを設置することでどのようなメリットがあるのか、今回のコラムで解説していきます。

駅や電車で起きる犯罪

駅や電車は移動手段の一つとして生活の一部となっていますが、犯罪やトラブルも多いものです。名古屋市のホームページ「地下鉄乗車人員（NAGOYAライフ）」によると、1日の利用客が多い地下鉄駅（2020年度）は、下記のようになっています。

・名古屋駅…126,578人
・栄駅…72,180人
・金山駅…55,993人
・伏見駅…35,843人
・矢場町駅…21,506人

多くの人が集まる場所は、無差別的な犯罪のターゲットにもなりやすいという特徴があります。その一方、通勤や通学の手段として使われるため、毎日決まった時間に駅を利用するという利用客も多いものです。そのため特定のターゲットを絞りやすくなります。

実際に、駅や電車では下記のような犯罪が発生しやすくなります。

• 窃盗（スリ）
• 痴漢
• 置引き
• 利用客同士の暴力行為
• 鉄道職員に対する暴力行為
• 不正乗車
• 盗撮、など

ちなみに、2022年7月に日本民営鉄道協会が発表した資料「鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について」によると、2021年度に起きた鉄道係員に対する暴力行為は全国で406件発生しています。このほか、異臭騒ぎや殺傷事件が起きるといったケースもあります。

防犯カメラを導入することで、こうした犯罪やトラブルが起きないように抑止する効果があるのに加えて、実際に犯罪が起きた際の確認のほか、証拠にもなります。そのため防犯カメラを導入する駅が増えているのです。それでは次の項目で、具体的なメリットについて見ていきましょう。

駅に防犯カメラを導入するメリット

駅に防犯カメラを導入する、代表的な3つのメリットについて解説していきます。

犯罪やトラブルの証拠になる

警察庁のまとめによると、2020年に警察に検挙された刑法犯は270,430件となっています。このうち、防犯カメラやドライブレコーダーの映像によって犯人が特定された事例は、33,273件です。割合にすると12.3％となっており、防犯カメラが容疑者の検挙に貢献していることがわかります。

前述したように、駅ではさまざまな犯罪やトラブルが起きる可能性があります。犯罪が起きた場合には、防犯カメラの映像が有力な証拠になると考えられます。

犯罪の抑止効果がある

防犯カメラがあると犯罪を抑止することができます。常に誰かに見られていることになるため、犯罪者に犯行を思い止まらせることができるのです。

前述した「鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について」によると、年度別の暴力災害発生件数は下記のように推移しています。

• 2011年度…911件
• 2014年度…800件
• 2017年度…656件
• 2020年度…377件
• 2021年度…406件

2011年度に911件あった鉄道係員に対する暴力行為は、年々減少していることがわかります。コロナ禍ということもあり、鉄道を利用する人自体が減ったこともありますが、2020年度と2021年度は2011年度に比べて半数以下になっています。

この要因として日本民営鉄道協会では下記のように挙げています。

• 全国の鉄道事業者による啓発ポスターの掲出
• 警察官 の巡回や警備員の配置
• 駅係員への研修
• 防犯カメラの駅構内・車内への設置、など

このように犯罪が減少した要因の一つに防犯カメラの導入も挙げられています。つまり駅や鉄道で防犯カメラを導入することで、犯罪抑止力が働くと日本民営鉄道協会では認識しているということなのです。

防犯対策にかける費用が削減される

鉄道係員など駅や鉄道で働く人の業務の一つは、駅や利用客の安全を守ることです。そのため安全に関する教育を受け、利用客が安全に利用できるよう指導を受けています。駅での犯罪を抑止したり、犯罪が起きた際にすぐに対応することなども鉄道係員の業務に含まれます。しかし規模の大きな駅では人の出入りも激しいため、駅の安全をすべて人間で行うのには多くの人材が必要になります。そのため人件費の肥大化につながってしまうのです。

しかし防犯カメラを導入することで、駅の安全を守るための人件費を抑制することができます。前述したように犯罪の抑止力が働いて犯罪やトラブルが減少するほか、防犯カメラの映像を1か所で確認するようなシステムを構築すれば、複数箇所の安全を1つの拠点で行うことができるからです。

鉄道や駅に関する防犯カメラの先進的な活用方法

これまで見てきたように、駅に防犯カメラを設置するメリットはいくつもあります。しかし、防犯カメラの活用方法がさらに広がってきており、さまざまなメリットを生み出しています。具体的に紹介していきましょう。

白杖や車椅子の利用客を検知し、迅速なサポートを実施

ここ数年、白杖や車椅子を利用している利用客が、線路に転落したり、車両と接触する事故が増えています。そうした事故を未然に防ぐために行われているのが、検知機能を用いたサポート体制の構築に関する実証実験です。

このシステムは、駅の改札付近にAIによる画像認識が可能なIoTカメラを設置し、白杖や車椅子を利用した客が改札を通過した際に自動検知を行い、駅係員の業務用携帯電話にリアルタイムで通知するという仕組みになっています。通知を受けた駅係員が白杖や車椅子を利用している利用客の様子を見守ることで、迅速なサポートが可能になるというものです。

線路への転落、ホームでの転倒を検知して通知

こちらもAIによる行動検知機能を用いた安全対策で、利用客が線路へ転落したり、ホームで転倒した際に自動で駅係員に通知を行うシステムです。線路への転落は迅速に対応することが安全確保には不可欠で、AIによる自動検知および自動通知によって迅速な対応が可能になるというものです。

実証実験の期間中に、実際に転落のおそれがある利用客を自動検知し、通知したことで、安全処置が行われたという事例も報告されています。

混雑状況の把握および分析の実施

防犯カメラの映像を分析することで、利用者の性別や年齢層などの属性データ、改札の通過実数、さらに混雑が多発する時間帯や車両などの情報を取得することが可能です。これらの情報を数値化することで、時間帯別の混雑具合、利用客層などのデータを得ることができ、駅係員の適切な人員配置など、混雑緩和に向けた対策を講じることが可能です。

また、周辺地域の商業施設の活性化、あるいは再開発計画などの支援にも役立てることができます。

顔認識機能で登録者を検知

2021年に開催された東京五輪を前に、JR東日本では防犯カメラの顔認識機能を使い、刑務所からの出所者や仮出所者などを検知する防犯対策を実施すると発表しています。JR東日本では、主要110駅や変電所にネットワーク化された防犯カメラが8350台設置されており、登録された人物の顔と映像に映った人の顔を自動照合するというシステムです。

不審者や指名手配者などの対象者を検知した場合、警備員が必要に応じて手荷物検査を行ったり、警察に通報するとしていましたが、国内ではルール整備が遅れていることから、実際の運用は見送られています。しかし今後、運用に関するルールが整備されると、こうしたシステムが実際に行われ、駅の安全が守られる可能性があります。

電車内での防犯対策

2022年6月に国土交通省が行った防犯関係設備や非常用設備に係る検討会で、鉄道車両内で多発する事件の対策として防犯カメラの設置を進めていく方向性をまとめています。これによると、全国一律ではなく、東京、大阪、名古屋の三大都市圏などの犯罪が発生しやすいエリアや路線で、鉄道車内に防犯カメラの設置を先行して推し進めていくという内容になっています。

これに先駆けて、名古屋鉄道では2019年に電車内の防犯対策として防犯カメラを導入しています。9500系と呼ばれる新型車両で、無料Wi-Fiとともに多言語対応の車内案内表示器や防犯カメラが設置されているのです。防犯カメラは1両につき3台設置されており、前方、中央、後方から車両全体を撮影しています。具体的な運用実績についての報告はまだありませんが、防犯カメラによって痴漢などの迷惑行為の抑止、犯罪行為の抑止に期待が高まっています。

駅は死角ができやすいため、専門業者に依頼することが重要

駅に防犯カメラを設置する際は、おおむね設置場所が決まっています。一般的に下記のような場所が候補になります。

・改札口…電車を利用する人が必ず通るのが改札口です。電車内で犯罪や迷惑行為があった場合は、加害者の逃走経路を特定するのにも役立ちます。 ・切符売り場…お金に関するトラブルが起きやすい場所です。自動券売機を利用した不正乗車などの抑止にも活用できます。 ・ホーム…転落や転倒などの危険を察知する際に役立ちます。また混雑具合を把握したり、係員の勤務態度などを監視するといった活用方法もあります。 ・待合所…置き引きなどの犯罪が起きやすいのが待合所です。また混雑時には利用客同士の接触や揉め事なども起きるため、トラブル解決にも防犯カメラの映像が有効となります。

防犯カメラには防犯対策を高める効果があるのに加えて、搭載されているさまざまな機能を用いることで、マーケティングや分析などにも活用することができます。そのため目的を明確にして、それに対応する機種を選ぶことが重要です。この点も駅に防犯カメラを設置する際のポイントになります。

また駅は死角ができやすく、撮影する範囲によって必要な台数が異なったり、設置場所が異なるものです。そのため、駅での防犯カメラ設置実績が豊富な専門業者を選ぶようにしましょう。